(旅エッセイ)天命を知り受け入れる旅⑤「私が持つ、たったひとつの強み」

仙台の街を歩いていると、街中に大きなドン・キホーテが見える。叶うなら、一度ドン・キホーテの創業者に会ってみたい。子供心を今も持つ人だろうか。私の視点で見ると、スーパーと宝箱から着想を得たように感じる。決して綺麗に整頓されているとは言い難いたくさんの陳列物の中からお宝を探すような買い方が、年齢問わず買い手の子供心をくすぐるのだろうか。考えると楽しくて止まらない。

元々原点回帰を目的に始めた旅なのでと言い訳しながら過去を振り返ってみる。物事の本質を考え分析して楽しむ趣味は大学院時代から始まった。学部時代学んでいた言語は正解がいつも1つでつまらなかったが、大学院で学んだ経営学は真逆で楽しくて仕方がなかった。色んな学問と混ざって日常へ溶け込む自由がある。

経営学で特に好きなのは、経済学者であるシュンペーターによる、「イノベーション" 一から創造したもの "としてではなく、" 既存のもの同士が新しい方法で結合して生まれるもの "とした」考え方である。こんなに希望をもたらす定義があるだろうか。おかげで、前職で業務改善をした際は正直全く苦労せずただ楽しいだけだった。素材はすべて身近にあり、あとは組み合わせを好きに想像して実験するだけなのだ。お店や自宅でペアリングを楽しむように。会社や社会等、何かを変えるヒントは実は身近に無限にあると信じている。

生きていく上での必要なヒントもそうだ。意外と身近なところにあるのだが、気づくポイントは、ハウツー本に頼らず自分の感度をひたすら磨くことかもしれない。グローバルコミュニケーション力を身に着けたいのなら、まずは出川イングリッシュを見ればいい。自分の中の本能と理性のバランスを整えたいのなら、spotify叶姉妹のファビュラスワールドを聞けばいいかもしれない。物事の本質を掴みさえすれば、ヒント探しはそう難しくない。

私には、たったひとつだけ独自の強みがある。「他者の魅力(強み)を見つけてまねぶところ」である。※まねぶとは、見たもの聞くものを真似しながら経験や能力を身に着けるの意

誰かの期待の影で、ずっと自分を否定され続けて育ったから、自分に自信がない代わりに誰かの良さを見つけるのは上手だった。自分に自信が全くなかった分、私から見ると周囲には魅力的な人しかいないように見えた。自信をつけたくて努力だけはとにかくしたけれど、ずっとみじめだった。

私は2回就活をしている。本来の自分に目覚める前、大学生時代の就活はどうもうまくいかなかった。自分に自信が持てず、何がやりたいかが浮かんでこない。惨敗する中で出会った女社長から「素直さを大切にしている」と聞き、自分が周囲に対していいなと感じること全てを素直に学んで身に着けることにした。

羨ましいと思うポイントがあれば、よく見て学び身に着けた。幼少期から嫌でも努力だけはずっと継続している。嫌なことを長年努力できた自分にとって、ただやりたいことをするのは自由でとにかく楽しかった。思えば、人をよく見て感じ取る力はここでついたのかもしれない。会社員をするうえでも、カウンセラーを志すうえでも生涯役に立つ経験となった。

先日カウンセラーの講座にて、6人1グループになり、1人を残りの5人が5分間とにかく褒めるというワークを行った。カウンセラーとして相手の魅力を端的に伝えるための練習であるが、私の番となった時にある同期が私の魅力について面白いことを言った。確か、「兄のような姉のような父のような母のような、色んな種類の安心感を感じる」とかだったと思う。鋭い、と思った。

30歳頃以降、時折「滅多にいないタイプ」や「唯一無二」等と言われるようになった。最近やっと何故そのように言われるか少しピンとくるようになった。出会ってきた魅力的な方々の強みを少しずつお裾分けしてもらい、個性と思われるまで磨きながら持ち続けたからだろう。長所がたくさんあるように見えるのかもしれない。

色んな方が色んな角度で見ている私の魅力は、皆私がこれまで出会った色んな方々が持つ魅力である。「好奇心旺盛でバイタリティのある母」・「黙って信頼を与え続ける父」・「哲学的で経営が大好きな祖父」・「決めたことは最後まで貫く祖母」・「研究者として天才的な指導教授」等々。もちろん身近な人だけではない。1日しか会ったことがない人もいれば、海外の人もいる。魅力的だと思えば本質を探りまねぶをとにかく繰り返していたから、私の中では数え切れない程の魅力がひしめいているのだろう。

旅を通してふと思った。もしかして、色んな人が私を通して本来の自分・戻りたかった自分に再会しているのかもしれない。もしくは自分の根本に影響する大切な誰かを見つけて安心するのかもしれない。理由はなんでもいい、孤独を感じたらここに帰ってくればいい。思う存分自分を解放して、泣いて笑って帰るべき自分に帰ればいい。自分を否定される辛さは例えようがないものだけれど、本来の自分に戻る幸せや爽やかさもまた何にも代えがたく例えようがないものだから。

続く 東(あずま)ゆう

山寺駅近くで食べた、芋煮と玉こん